企業における人材教育体制
企業における人材育成や教育体制は業種や規模によっても、大きく差があります。
新入社員が何百人、何千人単位で入社する大企業においては、人事部の部門や独立部門として人材育成を専門的に行う部署があり、入社から定年退職までのキャリアプランや教育プランが用意され、計画的に教育を行う体制が整っている企業も少なくありません。
企画や運用、講師を担当するのも自社の社員であり、教育専門というわけではなく、社内での人事異動もあり、全く違う部署から担当に異動することもありますが、入社時から自分自身も育成システムに乗り、社内の様々な面を経験してきているので対応力も高く、引き継ぎやマニュアルの読み込みなどをしながら継続的に運営がなされるのが日本企業の特徴でもあります。
一方で、中小零細企業では人材教育だけに人材を割く余裕も時間もないため、人事担当者や先輩スタッフ、時には社長自らが業務の合間に教育や指導を行うケースが少なくありません。
人材教育のアウトソーシング化が進んでいる背景
一企業で教育システムも整えることができる大企業に対して、中小企業では人材的にもコスト的にも時間的にも専門部署を設けたり、専任のスタッフを配置したりするのは難しいものがあります。
そこで、最近では教育や研修の効率化を図るためにアウトソーシングをする動きが加速しています。
地域の商工会や同業者団体などが主宰して、教育ビジネスを行っている会社に講師の派遣を依頼し、用意したセミナールームなどに各中小零細企業から研修受講対象者が集まって学ぶというスタイルです。
新人時の社会人マナーなどどの会社であっても共通する事柄をマナー講師から学んだり、業界に共通する基本知識などを専門の講師から学んだりします。
新入社員だけでなく、個人情報保護に関するレクチャーや、新しい法律やルールを学ぶ研修など、どの業種でも共通して必要となる知識やノウハウを学ぶ機会を合同で設けています。
これにより、講師を個別に招いたり、社内で講師を養成したりするコストや労力が省かれ、専門外のことをこなす必要もなくなるので業務に集中できるので業績アップなども期待でき、教育のアウトソーシングにコストを払ってもWin-Winの関係が築けるのです。
人材教育を専門的に行う会社
アウトソーシングを担う教育業界の会社には自社の経営者を筆頭に自社で講師を養成し、自社スタッフとして講師を抱えて、各企業に代わって必要な研修を行うスタイルの会社と、多彩な分野の専門家と提携し、ニーズに合わせた講師を派遣する講師派遣業スタイルの会社があります。
また、人事労務関係の教育を指導している会社の中には社会保険労務士の事務所が母体となった会社や、法律系のセミナーなどを提供している会社は弁護士事務所の運営、税務節税系の指導を行っている会社には税理士法人や公認会計士事務所の法人などが運営しているケースもあります。
アウトソーシングは一見、コストがかかるように思いますが、自社で講師を育成したり、そのための人材を雇ったり、時間をかけるより低コストと言えるのではないでしょうか。
自社の教育ノウハウを事業化する大手企業
少子高齢化による日本市場の縮小傾向で事業の多角化や、新たなビジネスチャンスの開拓が求められる時代にあって、人材教育のアウトソーシングを担う会社の中には教育業界ではなく、大手メーカーなどの大手企業が乗り出しているケースもあります。
自社の人事部門や人材育成専門部門が自社の社員だけでなく、同業他社の中小企業や異業種も含めた中小零細企業に対して研修をはじめ、キャリアプランのコーディネートまで対応しているケースも登場しています。
どの業種や企業であっても共通して必要となるビジネスマナーや個人情報保護、リスク対策などの研修をはじめ、自社の専門ノウハウを教育サービスとして事業化する大手企業も登場しています。
たとえば、IT通信系の企業がITに関する技術やノウハウなどを指導し、システムエンジニアやプログラマーなどのIT人材の育成をサポートするといったケースが挙げられます。
このように人材育成や研修のアウトソーシングを担っている業界は、教育や研修、人材育成を専門的に行う会社から、本業で培ったノウハウや自社の人材育成ノウハウ、システムを新たに教育サービスとして事業化して提供する会社とで主に成り立っています。
その内部においても日々、講師の育成やノウハウの共有化などが行われています。