メンタルヘルスの不調で休職や離職に至る原因はどこにあるのか
メンタルヘルスの不調を訴えて休職したり、離職を希望する人材が出たりした場合、その原因はどこにあるのでしょうか。
一般的には仕事ができなくなるほど追い込まれる原因は1つではないはずです。
業務が過多であったり、能力以上の仕事を任されていたりするなど業務が原因であるだけでなく、上司が怖い、相談しにくい、先輩からいじめられている、同僚との関係が悪い、取引先や顧客のクレームに耐え切れないなど様々なことが考えられます。
さらに驚くべきは、こうした仕事の内容や質そのものや人間関係といった要因だけでなく、職場環境が大きく影響している場合もあることです。
職場環境がメンタルヘルス不調に影響することがある
職場でよくあるデータ入力作業に従事していたスタッフが、モチベーションが低下し、もう仕事を辞めたいと会社を休みがちになりました。
単調作業が面白くなかったのか、それとも、もともとやる気がなく、集中力がない人材だったのかと上司や人事部などでは話題になっていました。
産業医がヒアリングを行ったところ、気持ちの面だけでなく、肩こりや眼精疲労にも悩まされており、視力も落ちてしまい、もうこの仕事は続けられないと訴えたといいます。
そこで、産業医が職場調査を行ったところ、職場のレイアウトがスタッフの気力低下や身体症状に影響を与えていることが分かったのです。
作業スペースが廊下から見通せる位置にあり、常に作業を監視されているような状況でした。
そのため、目を休めたり、少し手を休めたりするといったブレイクタイムさえ、とりにくかった状況だったことが分かったのです。
常に誰かに監視されている、仕事の手を休めてはいけないといったプレッシャーが、そのスタッフのメンタルヘルスに異常をもたらしたのでした。
そこで、レイアウトを変更して作業スペースが外から見えなくしたところ、症状が改善し、少しずつ笑顔が戻り、普通に働けるようになったといいます。
職場環境改善のカギ
この事例では職場の作業レイアウトが影響を与えており、それを改善したことで心身の不調が緩和されたというものでしたが、職場にメンタルヘルスに不調をもたらす何らかの原因があるかは、上司や人事担当者などからは分かりにくいものです。
そこで、メンタルヘルスの不調を予防するためには、実際に働いているスタッフと意見交換や改善要望などを出してもらい、スタッフ参加型で職場改善を進めていくのがおすすめです。
上司から依頼される仕事の量や、仕事での進め方の指示方法はどのような方法が分かりやすく、ストレスを感じにくいのかといったことから、上司などに相談しやすい環境や先輩や同僚にサポートを求めやすい環境とはどんな環境なのかを、一度ミーティングなどを開いてじっくり話し合ってみましょう。
新型うつ病への対処法
最近増えているのが見た目には元気そうで、プライベートでは外出などもしているのに職場に来るとやる気が出ない、仕事をしょっちゅう休む、休職して復職したかと思うとすぐにまた休職してしまうという、気分障害によるうつ病です。
このタイプは入院が必要なほどの重症ではなく、外来通院で十分な軽度のものであるため、上司や同僚からすれば、仮病だとか、怠け者といったレッテルを貼られがちです。
慢性的に休職と復職を繰り返されては企業としては困るうえ、かといって、メンタルヘルス不調を理由に解雇もしにくく、現代における難しい問題となっています。
精神安定剤などの服薬と休職による休養だけでは回復が難しい症状であり、リワークプログラムといった集団療法がベターな場合が少なくありません。
ですが、本人から実際の職場の状況や自身の行動が精神科医に伝わっていないと、こうしたプログラムも行われないまま、投薬のための通院だけで休職と復職のループが続くことになることもしばしばです。
できれば、本人の同意をとりつけて、本人の主治医に対して職場の状況などを伝える文書などを提出して検討してもらうとともに、企業の産業医や産業保険スタッフが本人の診察に同席できる機会を設けてもらえるとベストです。
いくらメンタルヘルスはデリケートな問題とはいえ、企業としては延々と仕事をしない状況で休職と復職、休職を繰り返されても困ります。
企業として仕事を安心して続けていくことの協力は惜しまないものの、今の状況も延々と続けていくわけにはいかないことを理解してもらい、対処策を講じるといいかもしれません。