入社してからのキャリアプランニングを
会社の業種や規模によっては難しい場合もありますが、人材教育は場当たり的に行うのではなく、採用時や入社してから定年に至るまでの長期スパンを想定して計画を立て、社員に平等に機会を与えながら実施していくことが望まれます。
会社の規模が小さい、もしくは、一度の採用人数が少ない会社では、「今年は1人だけだから研修はなしで先輩からの現場指導で十分」と済ませたり、「今年は5人いるから外部講師にセミナーをしてもらおう」とか、「新しい資格が導入されるから今年度は社員に受験対策をさせよう」などと場当たり的に行っていると、社員によって研修の度合いが異なり、知識や技術などにばらつきが生じてしまいます。
社員ごとに研修内容や実施回数が変われば不公平感も生まれて、仕事へのモチベーションや会社への信頼も低下しかねません。
また、現場としても突然研修が入ったり、受験対策をさせられたりすれば、業務にも支障を生じ混乱してしまうことでしょう。
そのため、全社員を対象として入社時から将来を見据えたキャリアプランニングを検討して、それに必要な人材教育を行っていかなければなりません。
経験や業務に合わせたキャリアプランを
新たに人材教育制度を設けて計画を立てる際には、新しい制度が適用される新入社員とこれまで研修を実施していなかった既存の社員との間に知識や技術の差や不公平感が生じないよう、中堅社員向けの人材教育プランなども同時に作成するのがベストです。
たとえば、勤続年数に応じた研修を計画すれば、新しい制度の導入にあたり、全ての社員が研修を受けられる環境を整えられます。
職種や役職などキャリア横断的に全社員に実施する研修をはじめ、勤続年数や経験に応じてレベルアップのために行う研修、職種や業務内容などに合わせて行う研修、昇格や昇進などのために実施する研修、管理職登用のためのマネジメント研修などを組み合わせ、働きながらステップアップしていける環境を整えます。
完成した人材教育制度や教育をあらかじめ社員に提示することで、スキルアップやキャリアアップを目指したモチベーションもアップしますので周知をするようにしましょう。
また、採用ページや会社説明会、企業パンフレットなどにも人材教育制度や入社後の教育プランを掲載することで、人材教育に熱心な会社だと注目され、キャリア形成をしたい応募者を増やすことにもつながります。
年間のスケジュールに落とし込もう
長期スパンで社員に平等に機会を与える人材教育計画が立てられたら、今後は毎年の年間スケジュールに落とし込む必要があります。
準備不足で満足な研修ができないということにならないよう、4月の入社時研修を皮切りに、「いつ、どこで、誰を対象に、誰が、どんな研修を実施するのか」を計画し、対象者と各部署への事前案内や研修場所の確保、講師の手配や資料やテキストなどの準備を行わなくてはなりません。
研修で使う資料などを自社で作成するためにはその準備に時間もかかります。
また、外部講師に依頼する際や、外部の会場を利用する場合にはそのスケジュールを抑える必要もあり、計画した人材教育が年度ごとに着実に実施していけるように担当者を決めて対応していきましょう。
対象者をピックアップし事前の案内や業務との調整を行おう
各研修の対象者を事前にピックアップし、本人だけでなく、上司や所属部署などに早い段階で通知しておくことも大切なことです。
企業での研修は業務の合間や業務と並行して行われるのが基本であるため、外れることが難しい業務と研修の日程がかぶってしまっては困ります。
研修に出て人材が一時的に業務を抜けることで空いた穴を、部署ごとにカバーする必要もあるので、早めの通知をすることで調整がつきやすくなります。
人材教育は重要だから最優先といった押し付けや傲慢な気持ちで実施するのではなく、企業においては日々の業務や現場が最も重要であることを念頭に各部署に人材教育の実施に協力してもらわなくてはなりません。
早めの通知や現場との調整を上手く行っていくことで、部署や上司、一緒に働くメンバーなどの理解も得やすくなり、研修にも出やすくなります。
業務に追われてなかなか参加ができない時や、業務のことが気になってしかたないといった状態ではせっかく計画して実施する研修も身に入りません。
社内の理解と協力を得て、各人が研修に行きやすい環境をつくることで、教育内容もしっかりと身につき定着させることができます。