セルフケアは社員任せではいけない
近年、職場でメンタルヘルスを病んで休職したり、離職したり、さらには最悪のケースとして自殺するという事態も目立ってきています。
そのため、企業ではメンタルヘルス対策の推進が求められていますが、その1つに社員が自ら行うセルフケアがあります。
セルフケアは自分で行うものだから、企業は関係ないと思ってはいけません。
メンタルヘルスに対する知識や理解は社員によって差があり、ストレスへの耐性や、職場での置かれている環境や仕事上の責任なども様々です。
そのため、メンタルヘルスやセルフケアに対する正しい知識の提供や情報提供、アドバイスなどを行うことも企業の責任として求められているのです。
企業が提供できるセルフケア対策
メンタルヘルスのセルフケアの第一歩は気づきから始まります。
つまり、社員自らがストレスを抱えていることに気付き、その解消や軽減にむけて適切に対処できる知識や方法を知って、自分自身でケアできるノウハウや能力を身に着けることがポイントになります。
この能力やノウハウを身に着けることで、状態が悪化しない前にストレスがたまっていることに気付くことができ、それ以上の無理をしないように心がけたり、誰かに相談したり、専門家のカウンセリングや治療を受けるなど最悪の状態にならないよう自ら対策がとれるようになるのです。
ですが、ストレスに気付く方法やセルフケアの方法を知らなければ、適切な対処や早期対処ができません。
そこで、企業としてはメンタルヘルスに関する正しい知識の教育研修やを行ったり、セルフケア対策のノウハウの情報提供やアドバイスを行うことが求められます。
自分でストレスチェックを行う機会を設けてもらうために、月に一度程度の割合で職場調査を実施したり、いつでもストレスチェックができるシートの提供なども行うといいかもしれません。
また、社員が安心して気軽に利用できる相談窓口を整備して、利用しやすいように周知しましょう。
また、相談窓口を利用することで社員が職場で不利益を受けたりしない体制を整え、相談しても大丈夫なのだということを周知徹底させることも大切になるでしょう。
企業が提供できるセルフケア対策の具体例
メンタルヘルスの不調者や離職者、休職者などを出さないようにするためには、セルフケアの重要性の意識づけや啓発を行い、社員に対して正しい理解と実践を促す取り組みが求められます。
その具体的な対策例をいくつか見ていきましょう。
たとえば、現代の企業で導入が進んでいるイントラネットを活用して、定期的な情報配信や常時、ストレスチェックができるページを設けるなどの環境整備が挙げられます。
また、 Webマガジンやメルマガ、企業内広報誌などに特集ページを設けたり、定期連載でセルフケアについての情報発信やアドバイスを掲載してみるのもいいでしょう。
専門家の監修やアドバイスを得たり、厚生労働省や自治体などで発行しているマニュアルなどを活用しながら、セルフケアのためのガイドブックを作成して、全社員に配ることも有効です。
朝礼の際などに定期的に簡単なアンケート形式によるセルフチェックの実施を図り、一定度合い以上のストレスを感じている方に注意喚起やカウンセラーなどへの相談を促すというのも1つの方法といえるでしょう。
本人だけでなく社員をフォローする立場にある管理職向けの研修を行い、傾聴法のトレーニングや良好なコミュニケーション関係の構築を図らせ、メンタルヘルス不調者を早期に発見とケアができる体制づくりも重要ポイントです。
そして、効果的で職場のコミュニケーションアップ対策にもなる有効な対策としてメンター制度の導入も注目に値するのではないでしょううか。
メンター制度とは新入社員と他部署の中堅社員を1組のペアとして、一か月に1回程度のペースで30分程度の面談を行って、困っていることや不安なことを話してもらい、アドバイスをするといったシステムです。
部署が違うので職場内の不満や抱えている人間関係の問題やストレスについて相談しやすい環境が整い、部署の垣根を超えた風通しのいい職場づくりにも役立ちます。
新入社員にとっては職場に頼れる父や母、兄や姉のような存在の人ができることになり、過度なストレスや悩みを抱えこむことなく仕事や職場になれることができる環境が整います。
やがては自分が先輩メンターの立場になって、後輩をサポートしていけるようになり、職場全体が働きやすくストレスを感じにくい環境へと変化していくことが期待できるのです。